卒業研究教育の研究について
よりよい学士課程教育の実現のために
本研究は、学士課程における卒業研究教育の目標・評価・方法の現状と課題を明らかにするとともに、より効果的な卒業研究教育の実現方法を模索することを目的としています。ここにおける卒業研究には、卒業論文、卒業レポート(ゼミ論文)、卒業実験、卒業制作、卒業発表、卒業上演等、様々な卒業課題を含みます。
卒業研究は、日本の高等教育の草創期から実施され、紆余曲折を経ながらも現在にまで受け継がれてきました。文部科学省の調査によると、「卒業論文等を授業科目として設けている大学」は97.6%にのぼり、そのうち90.0%の大学が学部の全部または一部で必修化していることが明らかになっています。『教学マネジメント指針』でも、「学位プログラムが提供する教育の集大成である卒業論文・卒業研究は、海外と比較しても我が国の優れた取組と考えられ、論文作成等に関連する様々な活動の総合的な評価が可能であることから、「卒業論文・卒業研究の水準」は、大学の教育成果を把握・可視化する上で重要な位置を占めていると考えられる」と言及されています。
しかしながら、卒業研究に関する研究は今まで積極的には行われてきませんでした。各教員の専門性や考え方が最大限尊重されることに加え、学生との緊密な関係性に基づいた個別指導が行われるため、研究対象として扱うことが困難であるためと考えられます。研究分野や教育方法の個別性や多様性を尊重していくことは、質の高い専門教育を実現する上で今後も重要であり続けるでしょう。一方で、2040年に向けた高等教育のグランドデザインにあるとおり、学修者本位の教育の転換のために「個々の教員の教育手法や研究を中心にシステムを構築する教育からの脱却」が必要となることも示されています。学修者にとってより良い学士課程教育を実現していこうと考えるならば、卒業研究のより良いあり方や、卒業研究によって可視化された学修成果に基づく教学マネジメント(カリキュラム改善)の在り方を個別教員、学科レベル、全学レベルで考えていくことも有益ではないでしょうか。
このような問題意識から、私たちは本研究を通して、よりよい卒業研究教育、ひいてはよりよい学士課程教育の実現に資するような知見を発見し、共有していけるよう尽力してまいります。
共同研究メンバー
西野 毅朗(京都橘大学)研究代表者
山田 嘉徳(関西大学)研究副代表者
岩田 貴帆(関西学院大学)
篠田 雅人(早稲田大学)
山内 洋 (大正大学)
土井 義夫(朝日大学)
川上 忠重(法政大学)
服部 律子(奈良学園大学)
佐々木 誠(秋田大学)
串本 剛 (東北大学)
研究助成(本研究は以下の助成を受けています)
●科研費(若手研究22K13733)「学士課程教育における卒業研究評価法の研究」(研究代表者:西野毅朗/2022―2027年)
●大学教育学会課題研究助成(2023-2025)